私たちがリモートワークや労働環境を生産性を論点にして考える際に、「生産性を高める」ことと「生産性を落とさない」という2つの観点を持つことが筆者は重要と考える。
松下啓太著「ワークスタイル・アフターコロナ「働きたいように働ける」社会へ」ではリモートワークの効果を例に以下のように説明されている。
「生産性を高める」とはオフィス以外の場所で働いた方が、オフィスで働くよりも生産性が上がっていると言う意味である。例えば、花粉症や猛暑を避けて快適な場所で作業することで、オフィスよりも多くの作業ができる、パフォーマンスが上がるといった場合である。
一方、「生産性を落とさない」とはオフィス以外の場所で働いたとしても、オフィスに来ていた時と同じくらいの生産性があるという意味である。例えば、育児や介護などで通勤できない人が、家からのテレワークをすることで、オフィスで働いているのと同じ作業ができているのであれば、テレワークでも生産性が落ちてないといえる。
なぜリモートワークで生産性が下がるという企業が少なくないのか
コロナの影響でリモートワークを実施せざるを得なかった企業が出社勤務に戻しているのは、リモートワークにより生産性が下がると判断したからと言う理由が多いようである。
多くの企業で、出社勤務の運用がリモートワーク上では再現できないから生産性が下がると言う判断に至っているようである。「生産性を落とさない」と言う観点を考慮してリモートワークをデザインすれば、ABWなど「生産性を落とさない」ことに最適化された運用を実現できると考えられる。それにより、「生産性を高める」効果も得ることが可能となる。
営業などは、リモートワークによって商圏を広げることが可能となる他、移動時間が無くなるなどわかりやすい効果はあるのだが、これは単にWEBミーティングが可能なだけでは効果は十分ではなく、WEBミーティングを実施する時間や場所の融通がきくことも重要である。
なぜなら、営業を受ける側の時間や場所の融通がきかないと効率的な商談は実現できないため、オフィスへの出社が義務付けられていると少なからず時間や場所の制約を受けてしまうからである。
また、ワーケーションや移住によってもたらされる新しいアイデアやイノベーションの創出といった「生産性を高める」効果についてはあまり考慮されていないと筆者は考えている。これは「生産性を落とさない運用」の実現後に今後検討される領域なので、積極的に検討していくつもりである。